「晴海フラッグ」の話し

先週、「晴海フラッグ」がテレビやネットのニュースで話題になっていました。

東京オリンピック・パラリンピックの選手村として使った後に分譲される予定の「晴海フラッグ」が、オリンピック延期に伴い引き渡し時期が延期されて、すでに購入した人たちが販売業者を相手に調停の申し立てをした件です。

業者側は手付金を全額返還する、ということですが、購入者側はそれでは納得せず、損害賠償を請求しているようです。

こういうのって、どちらの言い分の方が筋が通っているのか、というのは一概にいえない部分があります。

ただ、これから大規模な分譲を控えている業者側は、悪いイメージが定着するのを避けるために、割と良心的な対応をしているように、少なくとも外観からはそう見えます。

販売戸数4145戸のうち、まだ900戸程度しか販売していませんから、残りの販売状況がどうなるのか、とても興味があります。

都心の中央区に、これだけの規模のマンション群ができる訳だし、坪単価300万円なら比較的安い感じがします。

でも、中央区って言っても、勝どき駅から徒歩20分近くかかるという利便性の悪さはネックになるでしょう。

僕自身は都心のマンションに興味もないし、もちろん買うお金もないので当然ですが、別の点も気になります。

僕が現役の不動産屋のころ、神奈川の湘南の海岸沿いのマンションを仲介したことが何度もあるのですが、

海岸沿いのマンションて、建物のメンテナンスがけっこう大変です。

潮風が直接吹き付けるので、外壁の痛みが早いですし、窓ガラスも汚れます。

海の近くは景色も良くてイメージも良いのですが、実際にそこで生活するとなると、良いことばかりではないと思います。

まあ、今回のオリンピック延期はコロナという自然災害のようなものが原因ですから、それに伴う引き渡し延期もやむを得ないというのが世間一般の感情でしょうね。

東京からの転出者急増!

東京はここ数日、コロナの新規感染者数が減ってきていて、何となくホッとしています。

ただ、飲食店に営業時間の短縮を要請するだけで、こんなに感染者数が減るんだ、ということになると、ますます夜の飲食店が悪者にされそうで、そこはちょっと気の毒な気がします。

さて、本題ですが、総務省が先月29日に発表した「人口移動報告」を受けて、大手新聞各社が30日に掲載した記事のタイトルは、

 「東京からの転出者急増」「コロナでテレワーク普及」 

といった刺激的なものでした。 

 新聞記事のタイトルを見ると、コロナの影響で東京から人々がどんどん郊外に逃げ出しているような、そんな印象を受けます。  

「東京 転出者」とかで検索すれば、今でも記事が出てくると思いますので、興味のある方はご覧になってみてください。

どの新聞も似たような記事タイトルです。  

しかし、これ、本当のことでしょうか?  

ネット上の記事も、紙ベースの新聞記事でも、読者の興味を引き付けなければ読んでもらえません。  

だから、どうしてもメディアは過剰な表現で読者の興味を引こうとします。  

新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及し、都心から通勤圏内の郊外へ移り住む流れが進んでいる、ということが記事に書かれていましたが、確かにそういう人は中にはいると思います。 

しかし、それによって、東京からの転出者が急増するとは思えません。  

東京への一極集中に急ブレーキがかかるのなら、それはそれで好ましいとも思いますが、それもちょっと無いなと思います。  

元データの総務省の統計資料を見てみましょう。  

    

統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 2020年(令和2年)12月結果 (stat.go.jp)

表を見るとわかるように、名古屋圏や大阪圏は、転入超過数がマイナスになっています。つまり、人口は減っています。  

これに対し、  東京圏は、ずっと、「転入超過」が続いています。

つまり、「転出」する人よりも「転入」する人の方が多いです。これが実情です。  

転出者数は、2019年が、352,084人から、2020年は、361,091人となりました。  大した増加ではありません。  

ただ、2019年の転入超過数が「145,576」人に対して、2020年の転入超過数が「98,000人」と減っています。(赤い矢印の部分)  つまり、転入者数から転出者数を引いた値が、減少しています。  

この数字の変動をもって、「東京からの転出者が急増」とマスコミは言っているのです。  

いままでは、転出者数に比べて、転入者数の方がはるかに多かったけど、その差が縮まったというだけのことです。

  

しかも、この転入超過数って、2013年の値とほとんど同じです。  

確かにテレワークで住む場所にこだわらない人が増えたのかもしれないし、  地方から東京に来ていた大学生は、大学が休講になったり、講義がオンラインになったりで、東京で高い家賃を支払い続けるよりも、いったん親元に帰ろうか、というのもあるでしょう。   

また、このような時期に、わざわざ東京に引越ししないで、時期をずらそうと考える人もいるはずです。   

ですから、当然、転入者数は少しは減るでしょうし、転出者数は少しは増えるでしょう。   

しかし、統計上の数値はこの程度のことなのです。   

マスコミは視聴者の興味を引くように、「かなり大げさ」な表現を使います。  

しかも大多数の視聴者は、記事のタイトルを眺めるだけで、中身を細かく読み込むことはしません。  

マスコミの報道が真実だと思い込むのはマズイです。  

僕は、次のようなスタンスが良いと思っています。

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1.客観的なデータは信用してよい。また、直接、自分が見聞したものは信用できる。  

2.しかし、マスコミの報道は批判的に聴く。マスコミの記事は批判的に読む。絶対にマスコミの報道を鵜呑みにはしない。ましてや、ネットに流通している、出所も怪しい変な情報は、「原則すべて無視する」  

3.著名人や専門家の意見を聞く時は、できるだけ、その反対意見も聞くようにする。自分の好きな著名人の意見を鵜呑みにしない。


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と、こんな感じです。

それでは、また。

中古マンション価格の推移

21日に東京カンテイから、「2020年の主要都市別中古マンション価格」が公表されました。

中古マンション70㎡の価格推移に関するデータですが、首都圏では、東京23区が前年比プラス3.6%近畿圏では、大阪市がプラス4.1%、神戸市がプラス7.7%と、大きく上昇しています。

新型コロナの影響下でも、高い上昇を示しているのです。

もっとも、下落している地域(さいたま市、名古屋市など)もあるため、全ての地域で上昇しているわけではありません。

なぜ、新型コロナの影響で経済が停滞しているにも関わらず、中古マンションの価格が上昇しているのでしょうか。

東京カンテイによると、東京23区では、新型コロナ下での販売活動の自粛により供給戸数が減少した新築物件に代わり、好立地の築浅中古物件が実需・投資ニーズの受け皿になったことで、都市部を中心に価格水準が一段と高まった結果、上昇率が拡大したと分析しています。

この分析は、東日本レインズの統計資料によっても裏づけられます。

東日本レインズの「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)を見ると、中古マンションの新規登録件数も、成約件数も、どちらも前年を下回っています。

つまり、新築も中古も、どちらも供給戸数が減少しているのです。

これは新型コロナの影響で当然の結果と思われます。

そもそも営業活動自体が制約を受けていたので、どうしても供給戸数の確保に影響が出ます。

しかし、購買意欲は大きく減少しているわけではないので、新築マンションも中古マンションも、成約価格は上昇しているのです。

ただし、首都圏や近畿圏の一部の地域に限っての話しです。

個人的には、この新型コロナ禍においても、住宅の購買意欲が減退しないことの方が驚きです。

一部の人に限られた話しでしょうが、35年ローンを組んでマイホームを購入するという人が、思いのほか多いことに衝撃を受けています。

一流企業のサラリーマンや公務員は、いまから住宅ローンを35年間、返済を続けることができる、という自信があるわけです。

いろんな意味でうらやましいです。

自分なんて自慢じゃないですが、1年後の生活だって見通すことができません。

いまの時代は、堅いところに勤めている人が最強ですね。